「すぐに李に言おうか迷ったんだ。
でも李は自分の足で歩こうと、変わろうと頑張ってた。


変わろうとしてる途中で、俺が遠くに行くなんて聞いたら李がつまずいちゃうんじゃないかと思って言い出せなかったんだ」



本当は真っ先に伝えたかったんだよ?



夕里は私の髪を梳きながら、優しい声音で言葉を紡ぐ。



確かに武井先輩達を呼び出す前に留学の話を聞いていたら、決心が鈍ったかもしれない。



でも言うの遅過ぎるよ……



ゆっくりと起き上がって、涙を荒く拭う。



「…どうしてもっと早く言ってくれなかったの?
みんなどうして、私には何も言ってくれないの……」



彼方といい、夕里といい、なんでみんな今頃って時に話すんだろう。



そんなに私に言いたくないのかな。



そんなに私って信用ならないのかな。



ジワリとまた目から涙が溢れ出す。



遅いんだよ?



「……死んでからじゃ…旅立ってからじゃ、遅いんだよ……!」



握り締めた拳でベッドを叩こうとして、その手首を夕里に掴まれた。



そしてグイッと引き寄せられて、そのままキスをされた。



どうしてこんな苛立ってる時にキスなんかするの?



やめてよ。キスなんてされたら、怒ってる気持ちがうやむやにされてしまう。
掴まれていない反対の手で夕里の肩を押し返そうと手を伸ばした。