すると彼方の目から一筋の涙が流れた。



「……もも……だいす……き……」



涙を流しながら彼方はいつもの笑顔を見せた。



そして私の頬から彼方の手が離れていった。



私は慌てて彼方の落ちていく手を掴んで、包み込むようにして握った。



彼方を見ると、彼方は眠るように目を閉じている。



「…かなた?ねぇ、彼方……どうしたの?目を、開けてよ。
まだキーホルダー…っ完成してないよ?

退院…するんでしょ…?
それで私と一緒に…過ごすん、だよね…?

……ねぇ、彼方ってば……っ…
うぅ……かな、た……かなた……

一人で勝手に…行かないでよ……
私を…ぐす…一人に……しないで…っ」



何度も彼方の名前を呼んでも、彼方は目を開けてくれない。



顔を近付けても、なんの反応もしてくれない。



「…嫌だよ……っ……
置いて…ひっく……いかないでよ…


彼方……彼方……ねぇ、彼方っ!!」



声をあげて思いっきり泣いた。



彼方の冷たくなった体に顔をつけて、病衣を濡らすほどに泣いた。



綾女は私に抱きついてきて、静かに泣いている。



おばさんとおじさんは、互いに彼方の手を握って体を寄せ合って泣いている。



みんながいくら泣いても、彼方がもう一度目を覚ますことはなかった………