そう結論が出たのに、全速力で走る足は止まらない。



私の足は止まることを知らずに、病院へと走っている。



なんで止まらないの?



だってこれは彼方の寂しがり屋な性格が作り出した、嘘なんだよ?



だから走って病院に帰る必要なんて、ないんだよ。



手芸屋で綿も買ってないし、彼方に作らせようとした手袋の毛糸もまだ買ってない。



お使いが達成出来てないから、まだ病院には帰れないのに。



何も買って来ないで帰って行ったら、綾女のキーホルダーが作れないって彼方怒っちゃう。



だんだん前が霞んで見えづらくなってきた。



目から溢れる涙のせいだ。



次々に大粒の涙が私の頬を濡らすけど、拭ってる余裕なんてない。



走る足が止まらないのも、涙が止まらないのも全部彼方のせいだ。



彼方が綾女と協力して変な嘘ついたから、私こんなブサイクな顔になってるんだよ?



病室に行ったらみっちりお説教だから、待っててよね。



だから、彼方。



病室(そこ)から遠くには行かないでよ。