嘘……でしょ?



彼方が危篤状態だなんて……



だって彼方は治療に成功したら順調に元気になるって言ってたよ?



最初は治療の副作用で具合悪くなったりしたけど、それも次第によくなって、顔色だって悪くなかったし、歩行訓練のリハビリも調子良かった。



何の問題もなかったはずなのに。



今になって…なんで?



理解出来ずに身体がガクガク震えてる。



『医者と看護師さんが来てて、もう長くはもたないって……』



プツッ。



綾女の話を遮って通話を切った。



そして綿と毛糸の入ったカゴをその場に落として、私は走り出した。



手芸屋を出て総合病院へと全速力で走った。



もう長くはもたないって……



今冷静になって考えてみると、電話越しから綾女の周りが騒がしかった気がした。



何を言ってるのかは分からなかったけど、とにかくみんな慌ててた。



これは、嘘じゃないの?



彼方が私に早く帰って来て欲しくてついた、嘘なんでしょ?



そうだよ。絶対それだ。