「…彼方、入るよ?」
彼方がいる病室に着いて緊張せずに入る。
彼方は動かしていた手を止めて、私達を見て微笑んだ。
「…あ、ももに綾ちゃん。いらっしゃい」
綾女は「お邪魔します」と笑顔を見せた。
そんな彼方の手には編みかけの毛糸のキーホルダー的なもの。
「…彼方、それは?」
私が彼方の持ってるものを指差す。
彼方は自分の手元を見て、笑顔で答える。
「…あ、これ?これはもものキーホルダー」
出来たら鞄につけてね?
笑顔で編みかけの李キーホルダーを持ち上げる。
呆れてキーホルダーを見てから、ベッド周囲を見渡す。
彼方のベッド周囲にはウサギや猫、熊の毛糸の編みぐるみがある。
この域までいくと、女々しいという言葉しか出てこない。
そして私の口からは自然と呆れたため息が出た。
入院生活が長くて退屈なのか、彼方は最近手芸にハマってる。
マフラーからセーター、最近はぬいぐるみまで作ってる。
彼女の私でさえ不器用すぎてそんなの作れない。
彼方の隠れた才能が発動してた。
おかげでベッドの周りにはぬいぐるみが彼方を囲んでいる。