開いた窓から入る風から桜の匂いがする。
ベッドの上に座り、本を読んでいるのは、ニット帽を被った李の彼。
病院の中庭にある桜の花びらが、病室へと入ってきて彼の読んでる本へと挟まる。
それを合図に彼は本を読む手を止め、眼鏡をとる。
眼鏡をオーバーテーブルに置くと、真っ直ぐに俺を見つめる。
黒い澄んだ瞳に俺だけが映る。
「…モカ色の髪……君が"チャラ男先輩"?」
え、今俺のことをチャラ男先輩って言った?
この人と会うのは初めてだよな?
なんで俺のこと知ってるんだ?
しかもその呼び方は李しかしていないはずなのに…どうして…
どっかで会ったのかと記憶を辿っていると、クスクスと笑う声が聞こえた。
「…いや、君とは初対面だよ。
君のことはももからよく聞いていたから、何となく君かなって思って。
それに……」
もも?李のことか。
…それにって……
彼は笑いを止めて、優しい瞳で俺を見た。
「…君は必ず俺のとこに来ると思ってたよ。
諦めず、絶対に」
この人は一体何者なんだ。
エスパーか予言者なのか?
俺が来るのを待ってたかのような言い方をしてる。
驚き過ぎて声が出ない。
俺とは対照的に彼は微笑んでいる。
「…さぁ、まずは何から聞きたい?
約束のこと?ももとの思い出?
君には包み隠さず話すよ」
……最初からそうだった。
最初にこの病室に入ってから、ペースが全部彼に持っていかれてた。
そしてこれが真実を知る、始まりだった。
【side end】



