夕里の真剣な表情を見て、ちょっと李ちゃんが羨ましくなっちゃった。
私の時は夕里、こんな真剣な表情してなかったもの。
もう吹っ切れてるからいいんだけどね。
「…もし自分の存在を李ちゃんの中から消したくないのなら、ここに行って」
私はポケットから折ってある小さなメモを、夕里に渡した。
夕里がゆっくりとメモを開く。
「……栄田(さかえだ)総合病院、5階506号室。
……原崎 彼方……?」
「…そこに李ちゃんの彼がいるんだって。
今は退院に向けてリハビリしてるって言ってたよ。
私が夕里に出来るのはお説教とこれを渡すことだけ。
あとは自分で考えて」
自分は李ちゃんを諦めないのか、諦めるのかを。
私はバッグを持って、夕里の部屋を出た。
誰かの恋を応援するなんて、我ながらすごいことしたと思う。
しかもそれが夕里と李ちゃんだなんてね。
まだあの頃の傷、完全に癒えたわけじゃない。
けど、こんな二人を見ていられなくて。
自然と目に溜まる涙。
「…ダメだ。
強くなるって決めて、ここまで泣かずにやってきたんだから」
涙を拭う。
もう夕里のことに関しては泣かないって決めたんだから。
前を向け、私。
後ろは振り返らずに、進むんだ。
私は階段を下りて、夕里の家を出た。
【side end】



