「…早くしてください!ゆ、"夕里先輩"」



あ、呼んでくれた。



いつも俺に助けてもらってばっかだから、何か力になりたい。



李がそう言ったから、俺のお願いを聞いてもらった。



俺のことを名前で呼んで欲しいっていうお願い。



李には俺の名前を呼んで欲しかったから。



邪魔な先輩って文字が後についてるけど。



ま、李にしては上出来だな。



名前で呼ばれて嬉しくなって、李の後を追いかける。



「…ほら、李。早く行くよ?」



李の手を取って走る。



李は驚きつつも俺に手を引っ張られ、ついてきてくれる。



絶対手を振り払うと思ってたのに。



なぁ、李。



もし俺が李に想いを、"好き"って気持ちを李に伝えたら。



李は拒まずに、ちゃんと俺の言葉、想いを聞いてくれる?



振り払わなかった、この小さな手のようにーーーーーーー



【side end】