気にしなくていいんだよって言っても、心のどこかでは気にしてしまう。
綾女にとっての幸せな出来事を一瞬でぶち壊したあの事件は、一生と言ってもいいほど綾女に付きまとうのだから。
とてもじゃないけど先輩に、私から綾女の"傷"のことは話せない。
「…そ、そういえばあのチャラ男先輩はどこ行ったんですか?もう出発するっていうのに……」
無理やり話を変えた。
少し変に思ったのか、尾口先輩は顔をしかめたけどすぐに表情が戻り、辺りを見回した。
「…あ、夕里?夕里は雪菜に話があるって言って、どっかいったけど?」
雪菜ちゃんに話が?
何の話があるんだろう……
「…私見てきます」
盗み聞きするつもりはない。
でもまた雪菜ちゃんが傷つくのは嫌だから、様子を遠くから見るだけ。
そう思ったら私は走りづらい砂浜を走り出した。



