そこにはもう、当たり前のように夏の世界が広がっていた。


「…………。」


はるかは幻覚でも見ていたのかと頭を押さえて、目の前にある存在に首を振った。

そこには、今だはるかを見つめて微笑むあの男が立っているのだから。


「三咲はるかサン、だよね?」


男はそう問いかけると、この夏の景色の中で浮き立つ春物のカーディガンを羽織った姿で、歩み寄ってきたのだった。

はるかは必死に頭を働かせようと試みるが、分からないものは分からない。

そうしている間にも、男は一歩、また一歩とはるかとの距離を縮める。

そしてはるかの前で立ち止まり、優しく微笑んだ。