はるかが目を開いた瞬間、強い風がふき、葉を揺らした。
そう、葉を、揺らした…はずだった。


「さ、くら…、?」


はるかは目の前の風景いっぱいに舞散るその薄桃の花びらを漠然とした視界のままに捉えて、そう呟いた。

まさに信じられない、と言うように。

視界に広がる世界には、さっきまで当たり前にあった緑の葉も、蝉の鳴き声もなく、春の景色が広がっていた。


はるかは現状についていけないままに、その視界いっぱいに広がる薄桃の世界を仰ぎ見た。

上も横もどこもかしこもが見覚えのある春の桜並木だった。


そして、そんな桜たちを見上げながら、何処かでこんなはずはない。ありえるわけがない。と確かめるように並木を追っていくように身体をゆっくり回していった。