「別れたい。」

それは、呪詛。

繰り返すほどに、颯太を傷つけ、蝕んでいく。

気付けなかった。

不安に私が泣く度、

「別れたくない。」

と。

はっきり言い切る彼の低い声だけが、変わらない愛情を、伝えてくれから。

安心したから。

私は、自分のことばかりだったから。

「愛しているよ。ずっとこの気持ちは変わらない。」

いつか、夜の公園で私を抱き締めながら、颯太は言った。

「どうしたら、俺を信じてくれるのかな・・・」

その語尾が震えている気がして、見上げた。

悲しげな瞳に、戸惑う。

目をそらした。

颯太の瞳から。

颯太の、痛みから。

気付かない、ふりをした。

あの日・・・触れれば、皮膚を切り裂きそうに細い月だけが、私たちを見ていた。