「いらっしゃいませぇ~。店内20%オフでぇ~す」

学校を抜け出した私は、暇になってしまったのでアルバイトをしに行った。

私の大好きなブランドのお店でアルバイトをしている。

とっても楽しいアルバイトだ。

男子物も女子物も扱っている。

ハァ・・・。家に帰りたくないな。

「すみません。このTシャツのMサイズってありますか?」

っと男の人がレジカウンタ-までやってきた。

「えぇっと少々お待ちください!」

私が在庫をパソコンで調べていると。

「あの・・・気づいてないの?」

えっ?気づいてないの?って何が

「よくオレの顔見てみたら?」

言われた通りに私は、訪ねてきた男の顔を見た。

「あっ!久我星矢?!」

「オイオイ・・・。そんなに驚かないでよ」

えぇ~・・・。せっかく優雅なバイトを楽しんでいたのに。

久我星矢のせいで台無しだ。

「てか・・・何でいんの?」

私は少し怒った口調で久我星矢に問いかけた。

「あっ!オレこの店に毎回来てるけど・・・?」

あぁ~。初めて久我星矢に会ったのが、今日だったから今まで気づかなかったのか。

「けっこーお気に入りなんだよねっ」

まじか・・・。どうしよう。

バイトやめようかな?でもここのブランド好きだからやめたくないなぁ。

んーー・・・。

私がしばらく黙り込んでいると、

「服装かわいいねっ!制服じゃないんだ」

制服で働いたら、うちの学校アルバイト禁止なのに、バレちゃうだろ!

「・・・あっありがと」

「い~え」

私が来ている服装は、ミントのニットに白いフワフワのミニスカで黒いタイツを履き、茶色のショートブーツを履いている。

「てか、レジ溜まってるけど、いいの?」

あっ!お前が話しかけてくるからだろーが!

「あっ!忘れてた。Mサイズは在庫あるから、そこらへんにいる店員に話しかけて聞いてみて?」

「はぁ~い。アリガトっネ!」

そうして久我星矢はレジカウンターから去っていった。

時間は過ぎ、アルバイト終了の時間となっていたので、私はスタッフルームで着替えをしていた。

今日も疲れたけど、楽しかったなぁ!

「あっ!ヤスさんお疲れ様ですっ!」

「くるみぃ~。疲れたよぉ~。癒してくんない?」

「いや・・・彼氏さんに癒してもらってください」

「彼氏いないの知ってんだろ?嫌がらせか?」

「違いますよぉ~」

「「アハハハ」」

この面白い人はヤスさん。

本名・・・安川美奈だ。
 
高校3年生で私の1つ上の先輩だ。

「そぉだ!くるみさぁ~仲良さそうにお客さんと話してなかった?」

「あー」

見られてたのか・・・。

「あっ!その反応・・・もしや彼氏かっ?!」

「違いますよっ!彼氏なわけないじゃないですか!」

「なぁんだ・・・。てっきり彼氏かと」

「学校の人ですよっ!」

「ハイハイ」

あー。なんとか誤解は取れたかな?

とりあえず安心かな?

どぉれ。帰るとするか!

「あっヤスさんお疲れ様でした。お先失礼します」

「ほぉ~い!気をつけて帰んなよぉ~!」

そして私は店を出た。

ハァ・・・。疲れた・・・。

久我星矢もいたし・・・。本当に今日は最悪な日だなぁ~。

私はいつもの帰り道をトボトボと歩いていた。

ふと近くにある公園に目を向けると・・・

黒いニット帽を深くかぶった人が公園のベンチに座っていた。

なんか不気味・・・。あんなに深くニット帽かぶらなくてもいいだろ。

まっ気にせず行こっ行こっ!

私が公園の前を通りかかった瞬間・・・ニット帽をかぶった人はベンチから立ち上がりのそのそと私のあとを追うように歩いてきた。

・・・ん?なんか着いてきてる?

いんや・・・まさかな。

疑問に思った私はピタリと止まってみた。

それと同時にニット帽をかぶった人の止まる。

えー。これストーカーってやつじゃん・・・。

でも私をストーカーする人なんているのか?

そお考えていると、ニット帽を深くかぶった人がものすごいスピードで近づいてきて私の腕を掴んだ。

私は、キャーとも叫ばずに無言で無表情でそのニット帽をかぶった人を背負投してやった。

見事にドテンとひっくり返った。

ふんっ!ざまみろばーか。

「あんたバカじゃないの?この柔道歴10年の私に勝てると思ってんの?」

「イテテテテ・・・。さっすが振り魔だな」

・・・ん?振り魔って言った?

「この声聞いたことない?」

っと言いながら深くかぶっていたニット帽をスルリと取った。

「この顔見ても分かんない?」

「あっ!アンタ!?保健室に来た人だっ!」

「やっと分かった?もう気づくの遅いんだからっ!」

「イヤイヤこんな格好してるアンタも悪いでしょ・・・」

「アハハごめんごめん」

なんで久我星矢に3回も会っちゃうの。

本当に今日はついてない。

さっさと帰ろっ。こんな奴に構ってる時間なんてない。

久我星矢に何も言わずにその場を歩き出す。

「あっ!振り魔!もう暗いから送ってくよっ」

は・・・?なんで今日喋ったばかりの男子に送ってもらわなきゃいけないの?

「別にいいから。なんか合ったら背負投すればいいしっ」

「男は女を送って行かなきゃいけないのっ!」

カレカノでもなんでもない赤の他人なんだから別にいいじゃん。

また私は無視して歩き出す。

「もぉ~。イヤって言っても送ってくかんねっ!」

「・・・・・・」

どんだけうざいんだよっ。

しつこい・・・。

そして、私にとって悲惨な帰り道が始まった。