――誰かの掌がそっと額に触れたのを感じて、俄(にわか)に意識が覚醒する。

「…ああ、ごめん。起こしちゃったかな」

開いた目線の先で、見知らぬ女性がそう言って微笑んだ。

どうやら先程の掌の主は彼女だったらしい、置かれたままの手に頭を優しく撫でられた。

「あなた……は、だれ…?」

起き抜けのまだはっきりとしない頭で、目の前の女性に問う。

黒い髪に、金色の瞳。

何処かで見たことがあるような、顔立ち。

けれど思考にぼんやりと靄が掛かっていて、上手く思い出せない。

女性は微笑むだけで、こちらの問いには答えなかった。

「もう少し、休んでなさい。今は無理に考えないほうがいいよ」

女性はゆっくりと立ち上がると、開いた扉の向こう側に声を掛けた。

「ねえ、こっちの子、目を覚ましたよ」

「ああ。夕、有難う」

遠くから落ち着きのある低い声が聞こえて、足音がこちらに近付いてきた。

何処となく聞き覚えのあるような、優しげで低い声。

しかしそれが誰の声かは、まだ上手く思い出せない。

すると、その声の主がふと扉から顔を覗かせた。