いとしいこどもたちに祝福を【前編】

「才臥は、何ていうか…あの月虹の施設の中で唯一、らしくない大人だったから」

「一言で言うなら…うん、優しかったよ。口調とか、表情は元より雰囲気自体が」

「…!」

月虹に協力していたとはいえ、父は自分の知る父のままだったようで――それが妙に嬉しかった。

「記憶が戻った今なら、あの施設の中で才臥が一番まともな奴だったってはっきり言える」

「そのせいか陸も才臥と一緒にいるときだけは、いつもより少し楽しそうに見えたんだよ」

「…そうか。才臥さんは陸の心の拠り所になってくれていたんだね」

「でも、何で才臥が突然陸を月虹から逃がしたのかは解らないままなんだ」

「実の息子の風弓すら。だから風弓は酷く苦しんで奴らに惑わされたんだ」

――風弓は、昔から少し感情的なところはあるけれど、家族想いで優しくて、間違ったことが嫌いな性格だった。

炎夏での襲撃に至ったまでの間に、自分が想像している以上に風弓は苦悩していたに違いない。

そんな風弓の苦しみまで、月虹は陸を取り戻すための策に利用したのか。

「なあ、あんたさ」

「風弓の、片割れ」

ふと声を掛けられ、晴海は数歩、二人に歩み寄った。

「おれたち、風弓とは結構仲が良かったんだ」

「風弓はあたしたちと同じ、双子だったから」

「そう、なんだね……有難う」