そのもどかしさが痛い程解って、陸は目を伏せた。

「俺も…思い出したいのに思い出せないことがあるんだ」

が、そう口走った瞬間、しまったと思った。

ふと顔を上げると、やはり晴海は怪訝そうな表情でこちらを見つめている。

「…ごめん」

しかし、そう告げると晴海は何も言わずに俯いた。

仄が詮索しないと言っていたことを、彼女も守ってくれてるのか。

その気遣いに安堵する反面、申し訳なさで後ろめたくもあった。

「お互い…いつか、ちゃんと思い出せるといいな」

「……うん」

取り繕うようにそう告げると、晴海は浮かない表情のままで頷いた。





夢現(むげん)の暗闇と光輝 終.