いとしいこどもたちに祝福を【前編】

「あはっ!嬉しいよぉ陸、一番にあたしに逢いに来てくれたんだあ」

破壊された建物の隣の屋根の上に、栗色の髪をした少女が猫撫で声を上げながら現れた。

「何か変わったね、陸。髪も短くなったし、前はそんな怖い顔しなかったのにぃ…まあ、陸はどんな顔してても綺麗だけどお」

彼女とは上手く会話が噛み合った試しがないのだが、今はそうも言っていられない――何とか風弓のように説得出来ないだろうか。

「雪乃っ…この街は俺の父さんの大切なものなんだ!頼むからこれ以上、壊すのは止めてくれ!!」

「…何言ってるのぉ、陸?あたしたちに家族なんか、いないよぉ?外の奴らに、変なこと吹き込まれちゃったの?」

「違う、俺は騙されてなんかいない…!それに、香也(かや)が来てるだろうっ…香也は何処だ?!」

香也――あいつが晴海を連れ去ったんだ、きっと晴海は奴と一緒にいる。

「あはっ…陸があたしのお願い、聞いてくれるんなら教えてあげてもいいよぉ?」

「お願い…?」

「一緒に月虹へ帰ろう、陸。そうすればみんな街を壊したりしないよぉ?陸が月虹から逃げたせいで、みんなこんなことしてるんだからぁ」

「…!!」

(俺が、戻って来なければ良かった…?いいや、違う…!)

「此処は俺の生まれた国だ、俺が帰る場所は月虹じゃない…!!雪乃、本当ならお前だってっ」

雪乃が不快げに眉を顰めると、周囲の空気がざわざわと変化し始めた。

「…やっぱり陸はちゃんと教わらなかったんだ、だから解らないのね。月虹の外はあたしたちに良くないもので溢れてるから、騙されちゃいけないのに」

「雪乃…!それは教わったんじゃない、そう思い込むように洗脳されただけだ!!」

「陸はずっと外の世界にいて、騙されちゃったんだ。それとも、あいつが陸におかしなことを教えたのかな」