けれど目の前で、自責の念に駆られる周にどんな言葉を掛ければ良いのか解らない。

思い付く限りのあらゆる言葉も、一度周を拒んでしまった自分には上手く伝えられない気がする。

でも、それでも――どうすれば、今の気持ちを伝えられるだろう。

「――…とうさん」

やっとのことで、弱々しい音になった声はそんな一言。

その言葉に周は陸と同じ色をした、紅い眼を見開いた。

「父、さん」

もう一度、確かめるようにその言葉を繰り返す。

少し照れ臭かったが、同時に愛梨を目にしたときのように胸が高鳴った。

「…陸?」

「俺は、もし自分が貴方の息子だったら…今の貴方にこう言いたいんだ」

陸は頬に添えられたままだった周の掌を、握り返して目を閉じた。

頬を擦り寄せた大きな掌は、少し煙草の残り香がして、優しくて温かい。

最初からずっと、周はこの手を差し伸べてくれていたのに。

拒んで振り払ってしまっていただけで、手を伸ばせばすぐにでも届いたんだ――

「ありがとう、とうさん」

小さく告げて目を開くと、周は泣きそうだけど嬉しそうな顔で、笑っていた。





身心の疑念と帰趨(きすう) 終.