陸の言葉を遮って、周は口惜しげに歯噛みした。

「陸の気配が途絶えた場所には、僅かだが空間の歪んだ痕があった。何者かが其処へ、陸を引き込んで連れ去ったんだ」

「あ…」

背筋にぞくりと寒気が走る。

幾度も見た、幼い自分が闇に引き込まれる悪夢。

あれは、実際に自分の身に起こったことだったのか?

「俺にはその空間が何処へ通じていたかも探れず、四年もの間陸を捜し出してやることも叶わなかった。その間に、陸がどんな想いをしてきたのか…それを思うと俺は拒まれても疎まれても仕方ない」

「………」

「苦しむのは、いつも俺の大切な者ばかりだ。俺はお前たちを守ることも救うことも、代わってやることすら出来ない…ただ見ているだけだ。俺にはそれが、何よりもつらい」

周は泣き笑いのような笑みを浮かべて、愛梨にそうしたように陸の頬をそっと撫でた。

「…すまないな」

その視線が、陸の左腕に向けられる。

「その腕に植え付けられた魔法は、どうやら俺にも完全に解くことは出来ないようだ」

「!」

「…随分進行してしまっている。魔法に抗って、無理矢理能力を使ったりしなかったか?こうなると、解除は掛けた術者本人にしか行えない。俺に出来るのは魔法の影響を緩和させることくらいだ」

――慶夜や秦との争いの際に、無理に力を使った付けが回ってきたらしい。

いや、そもそも左腕を傷付けてしまった自分が悪いのだ。

制約の威力を緩めて貰えるだけでも、また力が使えるなら十分だ。