いとしいこどもたちに祝福を【前編】

すると周は京の胸元をぽすんと叩いて、陸の目の前まで歩み寄るとその場に屈み込んだ。

周にじっと顔を覗き込まれて、陸はびくりと身構える。

「…何が、不安だ?何が、お前を頑なにさせる」

膝の上で震えている陸の両手を、周の手が少し強引に掴んだ。

「陸」

「――ど…して……」

漸く口を開いた陸の声は、手と同じくらい震えていた。

「どうして…俺を疑わないん、ですか」

周は僅かに表情を曇らせながらも、何も言わず陸を見据えた。

おずおずと周の様子を伺いつつ、陸は言葉を続ける。

「俺は…貴方たちの陸だと偽るため現れた、別人かも知れない。現に俺は…自分が陸だって証拠も記憶も、証明出来るものを何一つ持ってないっ…」

「…偽者は自分からそんなこと言い出さないと思うがなあ」

困ったように首を傾げて笑う周に、陸は力一杯首を振って見せた。

「たとえ俺が望まなくてもっ…月虹が貴方を陥れようと、俺の姿を貴方の息子に似せたのかも知れない…!!」

――そうだ。

陸の様子がおかしくなったのは、船で薄暮が春雷を狙っているという話が出たときからだ。

月虹が作られた目的は、薄暮の侵略計画のため――

陸は以前から、自身が併せ持つ二つの力の不自然さに大きな不安を抱いていた。