いとしいこどもたちに祝福を【前編】

――その後間もなく、船はゆっくりと大きな港に停泊した。

「さて、到着だね」

やっと船の操縦から解放された日野は、大きく背伸びをしながら皆に船から降りるよう促した。

「私は少し此処で一休みしてから街に向かう。君たちは先に行きなさい」

「それじゃあ、もう…」

「うむ。とっても名残惜しいがお別れだ、晴海ちゃん。また落ち着いたら、みんなと一緒に炎夏へ帰ってきておくれ」

全員が船から降りるのを確認しながら、船上に残った日野はにこりと笑った。

「はいっ…日野さん、此処まで本当に有難うございました」

「いやいや。それに陸くん、早くご家族が見付かるといいな」

「…はい、本当に色々お世話になりました」

何の何の、と言いながら日野は陸の肩を軽く叩いた。

「日野さん、戻りは一人だから気を付けて帰るんだよ?あと、道中退屈せずに済んで楽しかったよ」

「私も若い子たちと共に過ごすことが出来てとても楽しかったよ。仄さんや天地先生には、きちんとみんなを春雷まで送り届けたと伝えておくからね」

「うん。宜しくな、日野さん」

最後に賢夜が声を掛けると、日野は少し寂しげにもう一度笑った。

「ああ、行っておいで、子供たち」


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