いとしいこどもたちに祝福を【前編】

「薄暮が次に狙ってるのも、春雷じゃないかって噂もあるし…あの国は春雷に対して前科もあることだし」

夕夏の言う“前科”とは何かと訊ねようとしたそのとき、傍らの陸の様子が少しおかしいことに気が付いた。

「…陸、どうしたの?」

「え…――いや、何でもない」

そう本人は言うが、どうも顔色が優れないように見える。

「だって陸…顔が真っ青だよ」

「まだ身体の調子が良くないんじゃない?元々酷い怪我だったのに、あの馬鹿が余計悪化させたからつらいでしょ」

夕夏も心配して、俯く陸の顔を覗き込んだ。

「いや、大丈夫…」

「今更船酔いってことでもないだろうし…春雷に着いたら一度医者に診て貰おうか」

「――そうだな、君は痛みを我慢する癖がついてるようだし」

「うわっ!賢、いつの間に起きたの」

今さっき、と答えながら賢夜は眠たそうに頭を掻いた。

「陸、君が無理すると晴海が一番心配するんだ。余り不安にさせるなよ」

「賢夜」

賢夜にやんわりと咎められ、陸は観念したように頷いた。

「うっ…うん……そう、だよな」

しかし具合が悪そうというより、何というか――違うように見える気がする。