いとしいこどもたちに祝福を【前編】

「ううん、今起きたところ…俺、いつの間にか寝てたのか」

眠る直前のことは覚えていないのだろうか。

いいや、寧ろ忘れてくれたほうがいい――再確認されたらきっと、恥ずかしくてまた動揺してしまう。

「…いっぱい、眠れた?」

「うん」

「髪、寝癖ついてるよ。直してあげる」

先のことはどうなるのか、全く分からない。

だったら今は、こうして傍にいられる時間を大切にしたい。

もし何か変化を起こして、この時間を壊してしまうくらいなら――

「…陸くんは、まるで小さな子供みたいだね」

「え?」

晴海と陸には聞こえない程度の声量で、日野が夕夏に囁いた。

「時折、母親に縋り付く子供のようになるんだよ。だから晴海ちゃんは、彼が心配で仕方ない」

「確かに…晴海以外にあんな甘えてるみたいな態度は見せないね」

「強ち、晴海ちゃんの言うことも間違ってないんだ。彼はあの子に、良くも悪くも一番気を許してる。それが異性としてなのか否かが解らんから、晴海ちゃんは不安なんだろう」

「…今はそれをはっきりさせなくても、いいの?」

「焦らず、見守ってあげれば良いじゃないか。あの子たちは漸く、炎夏にいた頃の障害から解放されたばかりなんだ」

優しく微笑んだ日野の言葉に、夕夏はただ黙ってゆっくりと頷いた。