――賢夜が出て行ってからずっと、晴海は役人に見付からないよう暗い船室の中で息を潜め続けていた。

灯かりは点けられないため、窓から注ぐ月明かりが妙に明るく見える。

どれだけの間、こうしているだろうか。

もう何時間も経ったような気がするし、ほんの数分しか経っていない気もする。

じっと待ち続けるだけの時間を過ごしている間に、感覚が麻痺し出しているようだ。

微かに耳に届く細波の音以外、他には何も聞こえない。

あんなに取り乱していたのが嘘みたいに、すっかり落ち着きを取り戻しつつあったが――

祈るように重ね合わせた、両手の震えはいつまで経っても止まらなかった。

「晴海…気分、どう?」

船の外の様子を見に行っていた夕夏が戻ってきて、心配そうに顔を覗き込んでくる。

夕夏は隣に腰を下ろすと、震える手を両手で包んでくれた。

「ごめんなさい、私…賢夜のこと信じてるのに…っ震え、止まらなくて…」

「目の前で大変なことが起こったんだ、落ち着かなくて当然だよ。大丈夫、大丈夫」

夕夏は優しく囁きながら、また頭を撫でてくれた。

すると少しだけ震えが治まった。

「…夕夏」

「ん?」

「私が、炎夏に来たときにも…夕夏がいてくれたら良かったのかな…」