「家は…すぐ近くなので大丈夫、です」

どうしよう、陸のことを話すべきだろうか。

しかし京と陸とが関係あるかどうかも、こちらの勝手な推測な訳だし――

「そうか、じゃあ其処まで見送るよ」

だが、陸に良く似た声と笑顔に優しく声を掛けられると思わずどきりとしてしまう。

晴海は足早に自宅の玄関口へ駆け寄ると、それを見守ってくれていた京を振り向いた。

すると京が、再び微笑みながらひらひらと手を振る。

「京さん」

「それじゃあ僕も行くよ。…またね、晴海ちゃん」

「…また?」

意味深な言い回しに問い返すが、京は微笑むだけで何も答えなかった。

(また、すぐ逢える…?)

確かに、確証はないが京とは再会出来るような気がした。

なら話しそびれた言葉はそのとき――陸が一緒のときに、また。

そう決めて、去ってゆく京の背を見送った。





颯然(そうぜん)たる呼声と既視 終.