「賢夜って優しいお兄ちゃんみたい」

「…へ?」

「あっ、あの…気を悪くしたらごめんなさい。此処に来る途中、夕夏にお姉さんが出来たみたいで嬉しいって話をしてたんだけど…賢夜はお兄ちゃんみたいって、私が勝手に思っただけなの」

賢夜は少し不思議そうに首を捻ったあと、そうか、と呟いて小さく笑みを浮かべた。

「君がそう思ってくれるなら、俺も嬉しいよ」

次いで賢夜の大きな掌に、頭を優しく撫でられた。

「…しかし晴海も、なかなか言うもんだね。ちょっと意外だったよ」

「えっ…な、何のこと?」

「あの雷娘相手に食って掛かってたでしょ。正直、君のこと大人しくて気弱そうな子だと思ってたからさ。あんなこと言えるなんて思わなかった」

…これは褒められてる、のだろうか。

「なんか、無意識のうちに思わずあんなこと言っちゃって…」

「へ~」

思い返してみると結構、恥ずかしい。

あの少女が陸のことを口にする度、妙な苛立ちを覚えてあんなことを口走っていたなんて。

胸の奥底の、この靄がかった妙な気持ちは一体何なのだろう。

どうしたらこの靄は晴れるのか、よく分からなくて晴海はこそりと小さな溜め息を落とした。





悋気(りんき)と独占と雷光 終.