君が思うより、君はキレイ。

帰りにアパートの脇でデリバリーバッグをしまっていたら、彼女の部屋から男が出てきた。

30代半ばくらいだろうか、メガネが映える整った顔立ちで、長身を生かし、細身のコートを着こなしている。

悔しいけどカッコいいオヤジだなと思って見ていたら、そいつは停めてある外車のドアを開け、携帯を取り出して話し始めた。



その時.......

聞こえてしまった。

もちろん聞くつもりはなかったし、知りたくもなかったけど。

通話の相手は明らかに家族で、今日は仕事で遅くなるとか嘘を並べた挙句、そいつは最後に優しい声になって、確かにこう言った。



「大丈夫。イブの日は早く帰るから。ママの言うことを聞いて、いい子にするんだぞ。」