「そういえば、ラケットを買わなきゃ」

 わたしは話を切り出した。

 緋色の隣はわたしで、後ろに藤井と佐々田がいる。

「ラケット?
 川原さんと桜木さんは初心者組だっけ?」

 佐々田が尋ねる。

 わたしたちがいた小学校にはバドミントン部がなかったから、
 当然初めてが多い。
 他の小学校出身者は経験者が多い。

 今までは基礎トレーニングばかりだったのだが、
 これからはやっとラケットに触れるのだ。

 始めは素振りからだろうけれど。

 トレーニングばかりで飽きてきたところだったので、
 ちょっとうれしい。

「そうよ。確か来週中に用意するようにって言われた気がする」

「来週中か。今度の土日あたりで買いに行けば
 間に合うんじゃないかな?」

 佐々田がいう。

「そうねぇ? どこがいいかしら? 
スポーツ店って行ったことないのよね」


 わたしは振り返り、含みをもたせるようにいった。