「里花ちゃん?」

 疑問符をのせて、緋色がちょっと首を傾げて
 上目づかいにわたしを見る。

 そんな仕草もかわいらしい。

 そんな表情で見つめられたら、
 きっと耐えられないわ。
 
 心臓を打ち抜かれたみたいに
 たいていの男子は恋に落ちる、と思う。

 緋色は自分が男子達にとって
 どんなふうに見えているのか知らず、
 無意識にやっている。

 怖いのよね。だから目が離せない。


「なあに」

 わたしはやさしく聞き返す。

「あのね。うちの門限っていつから五時になったの?」

 話、ちゃんと聞いていたのね。

「ついさっき」

「・・・・・・」

 緋色は驚いたように
 目をぱっちりと開けて、わたしを見た。

 もともと門限なんてありはしない。

 緋色が疑問に思うのは当たり前。

 あれは誘いを断るための口実で、嘘だから。



「親睦会行きたかった?」

「ううん。よかった。断ってくれて」

 緋色は首を左右に振ると、安心したように微笑んだ。

「でしょう?」

 わたしはその答えに満足して笑みを深めた。

 わたしもだけど、
 緋色が人の集まりに興味がない事は
 知っているからね。

 今頃、返事を聞いた女子の大半は、
 内心でバンザイ三唱でも
 しているんじゃないかしら?

 男子の手前、
 明らかには喜べないだろうからね。



 緋色に群がる男子達っていうのも、見てみたい気もするし、
 女子達の悔しがる姿も想像できて、
 実際にそれを見るのも面白そうよね。




 実は、
 行くも行かないもわたし次第なのよね。


 だから、感謝してよね。



 今回も、あなた達の気持ちを汲んであげたんだから。





 最初はね、結構楽しかったし。


 面白かったのよ。
 男子の色々な顔が見えて。




 だけどね。