「もう一度、聞くけど。
桜木さん、藤井君と佐々田君どっちが好き?」

 ハッキリと聞いてきた。

曖昧に濁すより、この際きちんと聞いておきたいのかも。

最強のライバル。

当人たちの気持ちは無視しているけどね。



「誰?そんな人知らないから、わかんない」

 緋色は無邪気に首をかしげて答えた。



 だよね。知らないよね。

 亮さん以外興味ないもんね。


 わたしだって彼らのこと、今日初めて知ったし。



「・・・・・」


 みんな目が点だ。

 一様に呆けたように、
 ぽかんと口を開けている彼女達の様子は面白く、
 思わず吹き出しそうになった。

 けど、寸でのところで堪えた。

 ここで雰囲気を壊して、
 女子達に睨まれたくはないからね。



「藤井君と佐々田君だよ? 知らない?」

「うん」

 緋色は即答で頷いた。


 知らないなら知らないで、
誰なのか聞いてもよさそうなものなのに
 それもしないし、
男子のほうを見ることもしない。

何にも聞かない緋色に彼らに関して
 興味はないことが伝わったのか、
緊張感が解け、
 ほっとしたような空気が流れる。