普通な学校生活を送るための傾向と対策

部活が終わり、校門前に行くと既に藤井と佐々田がいた。

「藤くん、佐々くん、お待たせ」

 一瞬、何が起きたのかわからなかったのだろう。
 二人は固まった。

「藤くん、佐々くん、どうしたの?」

 緋色は固まったまま、動かない二人にもう一度声をかける。

 口をぽかんと開けたまま、間抜けな顔をした二人は結構笑える。
 急に名前を呼ばれるんだもの、びっくりするのは当たり前よね。

「えーと。今、名前」

 やっと正気に返ったらしい佐々田が
 おそるおそるといった感じで口にした。

「佐々くんでしょ。それから、隣が藤くん」

 それぞれを向きながら、確認するように名前を呼んだ。
 すぐに名前も顔も覚えてしまった緋色に、苦笑するしかない。
 興味がありさえすればとても簡単なこと。

「藤くん」


「佐々くん」


 名前を呼ばれた二人は、それぞれ口の中で転がすように繰り返し唱えた。
 そして、見る見るうちに彼らの表情が変わっていく。

 喜色満面の笑顔になったかと思うと、わあと一斉に緋色に抱き付いた。
 感極まった行動なのかもしれないけど、
 これはちょっとやり過ぎじゃ。


「えっ・・・」


 抱き付かれた緋色は困惑の顔を浮かべ、どうすることもできずにいた。

 下校中の生徒たちから歓声とも驚愕ともつかない声が上がる。
 じろじろと見られている視線をひしひしと感じながら、コホンと一つ咳をする。

 あーあ・・・明日はどんなうわさになっていることやら。

 わたしの咳払いに気づいた二人は、パッと緋色から離れる。

 でも興奮冷めやらぬとばかりに頬が紅潮している。
 よっぽど嬉しかったんだろう。
 わかるけどね。

「よかった。やっと名前を呼んでくれた」

 佐々田の安堵感たっぷりの口調。

「うん。藤くんていいよね」

「うん。佐々くんって、気に入ったな」

 二人の満足そうな表情。


 よかったわ。気に入ってくれて。