普通な学校生活を送るための傾向と対策

 帰り道、わたしを送ってくれる藤井と佐々田から

「今度こそ覚えてくれるかなあ」

「覚えてくれないとさすがにへこむよな」

 弱気な言葉がポンポンと飛び出す。

「川原さんは一週間で、おれたちはそれ以上って。いったい」

 解せないという顔で、二人はしきりに首をひねっている。

「なんかコツでもあるわけ? 川原さんの場合はどうだった?」

 お手上げという顔で佐々田がわたしを見る。

「コツって言われてもねえ。元々名前覚えるのが苦手だから、
しつこいくらい名前を呼ばせて覚えてもらうしかないんじゃないかしらね。
わたしはそうしたし、気長にいくしかないんじゃないの? 
言っとくけど、本当に名前覚えないからね」

 わたしは念には念を入れて、強調した。
 もうちょっと粘ってほしいからね。

「気長って・・・」

 藤井は放心したように。

「長期戦かよ」
 佐々田は開き直ったように、突っ込みを入れた。

 名前を覚えてもらうためだけに、これだけ神経使うなんて思ってもみなかっただろうし。
 今までの中で、一番苦労してるのかも。

 緋色よね。一番の問題は。

 実は苦手なことではないのよね。

 興味がないのよ、他人には、亮さんがいれば満足って、そんな子だからね。
 亮さんしか見えてない子だからね。他の男子に目がいくわけがない。


 わたしもそれでいいと思っていたから。



 今回はそれじゃあ、困るのよ。
 早く名前覚えてもらわなきゃね。