「スポーツ特待じゃなかったんですね」

 意外という顔で佐々田が聞いていた。

 リビングに通されたわたしたちは、
 祥子さん(亮さんの母親)特製のケーキとジュースを振舞ってもらい、
 紫杏高校の話を聞いていた。

 藤井と佐々田はこの学校志望なので真剣に聞いている。

 緋色は亮さんの隣で腕に手を絡ませて、べったりとくっついている。
 亮さんもそれが当然のように時々、視線を合わせては微笑みあっている。
 やっぱり・・・バカップルだ。

 藤井と佐々田は目のやり場に困るように目をさまよわせ、
 なるべくそこに焦点を合わせないようにしているみたいだった。
 気の毒に。

 亮さん、緋色、状況を考えろ! といいたい。

「実はここだけの話だけどね、特待の話はあって、
おれが進学科を志望しているって言ったら、受験していいし、
特待の席は空けておくって言われたんだよ。だから、保険つきでね、
安心はしたけれど、その反面、絶対落ちるわけにはいかないなってね。
受験落ちたから特待なんて、みっともなくて、そりゃあ、もう必死に勉強したよ」

 そんな裏話があったとは。で、今の亮さんがあるんですね。