「おれは藤井賢哉」

「おれは佐々田拓弥」

 また再開したらしい。二人とも必死だ。

「藤井賢哉くん」


「佐々田拓弥くん」

 緋色は復唱するように名前を呼ぶものの、
言い方はおざなりで面倒くさそうにも見える。

緋色にしてみれば迷惑そのものだろう。

二人に興味はないのだから・・・名前を覚えるほどでもない。

彼らを引き入れたのはわたしで、わたしの自己中的な理由からだしね。
いわば緋色はそれに付き合っているだけってね。

藤井と佐々田が聞いたらさぞやがっかりするだろう。

 でもねぇ、それではちょっと困るのよね。わたしが。

 最低限、名前は覚えてもらわないとね。
 二人に任せておいたら拉致あかないし。
 やっぱり、わたしが何とかしなきゃ、なのかしらねぇ。
 自分のためだしね。



「緋色。どうしたの? みんな家の前でたまっちゃって、楽しそうだね」

 背後から暢気な声が聞こえた。振り返らずとも声の主はわかった。