待ち合わせの5分前。



すでに隆弘はいた。



「ごめんね、お待たせ。」



後ろから声をかけて、肩を軽く叩く。



「花那、おはよう。」



振りかえって、眉尻を下げて笑う隆弘。



そして、あからさまに、安心した顔をした自分の顔に気づいたのか顔を横に背けて、前髪を指でつまむ。



「ふふっ。」



「なんだよ。」



笑う私に、いじけた声で言ってくる隆弘。



顔を横に背けるのも、前髪を触るのも、照れているときのクセ。




おかしくて、ちょっぴりうれしい。




「今日は、来てくれないのかと思った。」



「ふーん。」



まだいじけている隆弘にちょっと意地悪する。




「もうからかうのはやめてくれよ。今日は奢るから、早く行こうか。」



「うん。」



隆弘は困ったように笑って、私の手をとって歩き出す。



その手は私より少し暖かくて、安心する。



なんだか、今日は楽しめそうだな…。