どれくらいそうしていたのだろう。
たぶんそんなに長くはなかった。
でも、とても長い時間そうしていたような感じかした。
「ごめん…。」
「あっえっと…。」
私を包んでいた腕が、ぱっと離された。
謝る先輩に、何て言えばいいのか。
今さら恥ずかしくなってきて。
どうしよう。
たぶん、先輩もそう思っていて、目線を外している。
「…じゃあ、行こうか。」
「はい。」
お互いなんだかぎこちないけれど、ふれないほうがいいと判断した。
何もなかったかのようにふるまう。
「あと、5分くらい歩けば着くからね。」
「あっ、はい。」
それから、ゆっくりふたりで歩いた。
ぽつぽつと会話をしたけど、正直頭に入ってこない。
それは先輩もおなじようだ。
同じことを聞いてきたりしていた。

