「っわ…。」
ぼっーとしてたせいか、先輩が止まったのに気づかなくて、先輩の背中にぶつかってしまった。
「先輩、すみません。ぼーっとしてて…。」
慌てて謝るけど、先輩は反応しない。
「先輩…?」
不思議に思って、先輩の横に並ぼうとする。
「ごめん。」
「何言ってるん…っ!?」
いきなり腕をつかまれたと思ったら、先輩の腕の中にいた。
「せっ先輩?」
どうして、こうなったのか。
いきなりすぎて頭がついていかない。
「黙ってて…。お願いだから。」
先輩は戸惑う私にそれだけ言って、腕の力を強くした。
まるで私を何かから隠すように。
こんな街中で。
誰が見てるかわからないような場所で。
ダメなのに。
ダメだってわかってるのに。
私は黙って先輩の言った通り黙って腕の中にいる。
先輩の声が、あまりにも苦しそうだったから。
抵抗なんて、できない。
いや、したくない。

