窒息寸前、1秒





「花那?何してるの?」



「夏海…。」



下駄箱でしゃがんでいる私を不思議そうに見つめるクラスメイトの夏海。




私はにこりと笑って、立ち上がってスカートを直す。




「ちょっと、お腹がいたくて…、おさまるまでしゃがんでたの。 」



とっさに嘘をついてしまった。



隆弘とあの人のことなんて言えない…。



「そっか。今日、佐伯は?」



「あ…。隆弘は先に帰ったよ。用事あるらしくて急ぐからって。」



「あ、そうなんだ。じゃあ私と帰ろう?」



「うん。」



私は自転車を押しながら歩いて、その横に夏海が歩く。



私たちは家の方向が一緒だったみたいだ。



「花那とこんなに話したの初めてかもね~。」



あんな最悪な気分だったのに、意外に話は盛り上がって、楽しい。



もともと、学校では友達は結構いるけど、そこまで深く関わることのなかった私。



目立つ方訳ではなく、そこまで地味でもないけど、やっぱりどちらかというと地味な私。



「本当だね。夏海と話せて嬉しいよ。」



夏海はクラスの中心の女子で実は苦手だったけど、今の言葉は本音。



「良かった~。私、花那に嫌われてるかと思ってたし。」



「え?なんで?」



「だって、距離おいてるってバレバレだよ。」



「え…?」



「私、意外と人の気持ち察するの得意なんだ。だから、なんとなーくだけど、花那が私と距離おこうとしてるのわかっちゃったの。」




「そっか…。」



夏海は、人の気持ちにきちんと気づける人だから、人気者なんだなって思った。



「でも、今日花那と話して安心した。これからは今までよりも、仲良くしようね!」



「あ、うん!」



じゃあね、って手を振って白いマンションに入っていく夏海。



これからは、夏海と仲良くできそうな気がした。




本当に何となくなんだけれど。