それから、私は安心しきっていた。
隆弘が会っていたのはお姉さんなんだって知ったから。
もろん、いいいい気はしなかったけどよく言うブラコンってやつかな、なんて考えて。
でも、この前また学校帰りに隆弘が呼び出されて、ひとりで帰っていた時、
「たっくん、来てくれたの?」
「来ないわけないだろ?」
学校の前に留まった赤い車から顔を出して、隆弘と話す由梨子さん。
「ふふっ。あの子は?」
「花那のことは関係ないだろ。」
「怒らないでよ。私だって嫉妬くらいするのよ。」
由梨子さんが隆弘の腕をなでる。
「やめてくれよ、姉さん。」
隆弘は由梨子さんの手をそっと払って、眉間にシワを寄せる。
「ふたりの時は、姉さんなんて呼ばないでっていつも言ってるじゃない。」
「…由梨子、やめてくれ、本当に。」
「そう、第一私たちは血なんて繋がってないじゃない。」
愉しそうに唇を歪める由梨子さんは、綺麗だけれど、とても怖かった。
ふたりを見て思わず隠れてしまった数分前の自分をひどく後悔しながら、頭のなかはひどく冷静だった。
やっぱり、と妙に納得してしまった。
ふたりの間には、姉弟としてではなく別の関係があるのだと。
そうすれば、私に向けられた敵意も、執拗な呼び出しも、すべて納得いく。
隆弘はどうして、私なんかと付き合っているのだろうか。
自然と涙が一筋流れた。

