「先輩、ありがとうございます。」



「いやいや。こちらこそ、ありがとう。」



綺麗に微笑む先輩。



そんな先輩を見て、心が一気に軽くなった。



「よかったです。」



私も自然と笑顔になる。



そんな私を先輩は急に真剣な顔で、じっと見つめてくる。



「な、なんですかっ?」



なんだか、色々と必死で忘れていたけど先輩はとてつもなく格好いい人だった。



そんな人に見つめられて慌てる私。



「いや、ただね。本当に浮気しない?今日で花那ちゃんのこと気に入っちゃった。」



「まっまだバカなこといってるんですか!?」



「ははっ。顔真っ赤。満更でもないっていうふうに捉えていい?」



「だから、違いますってば!」



先輩のペースに乗せられる私。



先輩はからかうような笑みを携えて、私を見る。



「ごめん、ごめん。からかいすぎたね。」



「…もう、いいです。」



拗ねている私に先輩が、ちょっとだけ申し訳なさそうに謝った。



そして、先輩は急に真剣な表情を浮かべてまた私を見る。



「でも、俺はね。結構本気だったよ。」



「はい?」



意味がわからない。



先輩が纏った空気の急激な変化にについていけない。



「浮気のこと結構本気だったよ。隆弘と由梨子を見る花那ちゃんを見て、俺と同じだなって思った。」



「先輩…。」



「ただ、傷のなめ合いがしたかったのかもね。でも、今は興味があるよ。花那ちゃん自身に。」



張りつめた空気を自分で壊すように、最後にクスッと笑った先輩。



「浮気は無理ですけど、友達ならいいですよ。たまに、私の話を聞いてください。」



私の言葉に一瞬驚きの色を滲ませた表情の先輩。



それから、柔らかく笑って



「ありがとう。花那ちゃん。」


と言った。



たぶん先輩は気づいたのだろう。



私の言葉の裏に、先輩の話も聞きますよっていう意味が隠されていたことに。