窒息寸前、1秒





「最近ね、分からないんだ。自分が由梨子をどう思っているのか。大切なんだ、大切なんだけど…。」



「隆弘とのこと気にしているんですか?」



「違う、憎いんだ。」



「は?」



大切なのに、憎い?



矛盾しすぎている。



でも、先輩は真剣に悩んでいるようだ。



「一緒に居られればいいと思ってた。だけど、気持ちまで欲しいなんて欲張ってしまう。」



先輩の言葉をただ黙って聞くことしかできない。



「由梨子は、父を憎みきれないけど、母を大切に思って。このふたつの感情に板挟みにされていた。それで、自分自身を追い込んで、すり減らしていった。俺との婚約も由梨子の母が望んだことだから、由梨子は受けたんだよ。」




「そんなこと、ないです。」



「そんなことあるよ。」



「由梨子さんが先輩のことどう思っているとか、そんなこと私には分からないです。だけど、先輩が由梨子さんを大切に思っていることは私にも分かります。だから由梨子さんもきっと、先輩のそんな気持ち感じてるはずです。」



これは、自身をもって言えること。



土曜日、初めて先輩と由梨子さんがふたりでいるのを見たとき、由梨子さんはとても柔らかい雰囲気だった。



先輩とのことを話す由梨子さんも、楽しそうだった。



だから…。



「由梨子さんのお母さんが望んだことかもしれませんが、でも選んだのは由梨子です。大切な娘を先輩に任せてもいいと由梨子のお母さんが言っているんですよ?もう少し、自身をもっていいと思います。」



「花那ちゃん…。」



たたみかけるように言う私に先輩は目を見開いて驚いている。



そんな先輩を見て我にかえった私。



「あっあの、すみません。私…。」



「ありがとう。」



私の言葉を遮って、お礼を言う先輩。