「驚いて何も言えない?」
ははっと小さく笑う先輩。
私は何も言えなくて下を向いたまま顔があげられない。
先輩は私が由梨子さんと隆弘の仲を疑っていることに、気づいている?
「やっぱり、あのふたりのこと勘づいてたんだね。ごめんね。試すみたいなこと言って。」
「え…?どうして、謝るんですか?」
「ふたりのこと、苦しかったよね。悩んだよね。」
「あの…。先輩の謝ることじゃない、です。」
何…さっきから何なの?
先輩が結局何が言いたいのか、全く分からない。
「実はね、花那ちゃんのこと、見たのこの前土曜日がはじめてじゃないんだ。」
「でも、先輩はそんなこと言ってませんでしたよね?」
「隆弘の学校まで由梨子が車で迎えにいったとき、俺も乗ってた。そして、こっちを見てる花那ちゃんにも気づいていた。」
私が由梨子さんと隆弘の関係を少し知ってしまって、疑い始めた日。
ふたりの雰囲気はただならぬ関係なのだと、予感せたあの会話。
「あの、赤い車ですよね?」
「そうだよ。だから、土曜日に花那ちゃんと会ったとき驚いた。それに、由梨子を見て花那ちゃん表情が曇ってたから…。ふたりのこと疑っていることなんて簡単に想像できた。」
「そうですか…。」
先輩は最初から知っていたんだ。
でも、なんのために私に近づいて、浮気しよだなんて言うのか…。

