「ていうか、孝輔先輩のこと知らないのかよ?」
「はい?」
心底驚いたように聞いてくる隆弘に、私がびっくり。
「花那、本当に清学の生徒かよ。」
清学とは私たちの通ってる高校。
なんで、隆弘はそんな変なこと言うのかな。
「当たり前じゃない。」
「いや、永瀬孝輔先輩だよ?うちの生徒で知らないやついないだろ。」
「は?なにもの?」
「なにやらせても完璧であの見た目だろ?ものすごい人気で伝説だよ、あの人は。」
「へー。」
「月曜日誰かに聞いてみろよ。」
真面目な顔で隆弘が言うので、半信半疑ながらも少しだけ信じてみることにした。
「分かったよ。送ってくれてありがとう。また月曜日ね。」
隆弘と繋いだ手をするりと離して、向き合って笑う。
「あぁ、またな。」
隆弘は笑って、私の頬に触れた。
それから、真剣な顔をして、私の唇にそっと自分の唇を重ねた。

