~桜~                     さっき、飛鳥ちゃんに言われたことは気にしないことにしよう。
…私は巧の彼女だもん。
「巧っ~私バスケ分かんなくて…教えてくれる」
たたっと巧に駆け寄る飛鳥ちゃん。
…わかんないなら仕方ないよね…。
「いや~な女」
「ね~」
ひそひそと私の隣にいる女の子たちが飛鳥ちゃんを見ながら話し出す。
…悪口かな…
気分悪いな…。
「飛鳥、バスケ部キャプテンだったじゃんね」
「巧君君かわいそう。なんも知らないから…」
え…
飛鳥ちゃん、バスケ知ってるの…
じゃあなんで嘘つくの…
なんで…
タクミガスキダカラ…
ああ…そっか…飛鳥ちゃんは巧が好きなのか…。
私の目には楽しそうに飛鳥ちゃんと話してる巧が映る。
巧…ちゃんと聞くから。
だから、巧に聞こう。
私のこと好きっって。
まっすぐに…ー…。
            体育の後、私は「何かあったのか」と聞いてきた巧に「放課後、図書室で待ってる」と伝えた。
…大丈夫。
ちゃんと覚悟はできてる。
図書室の前で深呼吸をして扉をあける。
「巧いるのー…」
薄暗い室内のなか、巧がいた。
暗くてよく見えない。
「たくっー…」
「んんっは…ぁ飛鳥やめっ…」
聞いたことのない巧の声。
飛鳥ちゃんといるの……
確かめたくない…
でも確かめたい…。
自分でもよくわからない感情に苛立ちを覚える。
「はぁっ…お前っキスとかっだめだろっ」
「なんで私は巧が好きなんだよ」
キス…
巧…飛鳥ちゃんとキスしたんだ…。
ガタンッしまった。
あまりのことにびっくりしすぎてかばん落としちゃったよ…。
「っ桜っ」
驚いたように目を見開く巧その横には飛鳥ちゃん。
…ちゃんと聞くって決めたじゃん。
「あっ…二人はどうしたの…なんか…あったの…」
こえが震えてきた。
ちゃんと…
ちゃんといってくれるよね
ごめん。キスした…って…
「あー…担任にさっ資料たのまれてっ…今きたばっかなんだけどっ…」
嘘ー…
これが巧の答えなんだー…。
「そ…だよね。今まで一度も“好き”って言ってくれないなんておかしいよね…」
「え…」
「飛鳥ちゃんとキス…したんでしょう…」
「っ…」
巧は悲しそうな顔をしてうつむく。
やめてよ…
そんな顔しないで。
そんな顔させたかったわけじゃないよ…
だから、さよならするね
「ばいばい」
                       あれからどれくらい歩いただろう…真っ暗になった空には星がまばゆいくらいにでていた。「…ぅっ…たっ巧…うぅっ…」さよならしたくなかったよ。あなたの隣にいたかった。いたかったよ…巧ー…