~桜~                     「桜。帰ろう」そういって私の彼ー…佐田巧(さたたくみ)は私の腕をぐいっとひっぱる。
付き合ってもうすぐ半年。
お昼はもちろん、登下校も一緒なんだ
「あっ百合また明日ねっ」私は話していた友達に別れを告げ、急いで巧の方へ顔を向ける。
「お待たせっ」
「別に…」
…巧は少し(いや…かなり)クールだ。
会話もメールも、“ああ”とか“ふーん”とか。
百合は巧に“鉄の仮面”というあだ名をつけた。
…友達の彼氏にそのあだ名はどうだとおもうが、本人のいないところで限定なので、まぁ…ね。
「あのね、巧今日ね、…」
私がいつものように1日を報告する。
「でねっ授業中寝ちゃってねっ先生に教科書でたたかれちゃって…」
私が話している間も巧は相づちをうってくれて、時々ふっと微笑んでくれ、私はそれが嬉しくてもっともっとたくさんの話をする。
そうしていると家の前につく。
学校から家までの20分もすぐに感じてしまう。
「でねっ明日はねっ…」
「いいから」
えっ…
「明日のことは明日聞く。そんなに一気に喋んなくても明日も迎えにくるから。な」
巧はそういって私の頭をぽんぽんとたたく。
「おやすみ」
「うん。おやすみ」
巧は私が家に入るまで待ってるから、早く入らないと…。
私は心のなかでもう一回(おやすみ)とつぶやいてから家に入った。