俺には千華の「お爺ちゃん」の正体が見えていた。けど今はそんなことはどうでも良かった。
悲しかった。悔しかった。自分は秘密を知っている。それなのに言えない、そのことがたまらなく悲しく、悔しかった。
できることなら俺も秘密を言いたかった。だが俺は口止めされている。その現実を、俺は素直に飲みこめなかった。
「そろそろ戻らないといけないから、行くね。」
千華は部屋を後にした。月は俺の涙を照らすことはなかった。月は雲に隠れた。