「優那もさ、困った子だよね」

「自分の彼女くらい自分で管理してよ」


自分には関係ないと言わんばかりの態度を取るミズキの横っ面を殴り飛ばしたい衝動に駆られるが、なんとかそれを抑え込む。ミズキを殴ったってどうしようもないのだ。

もう一度溜め息を吐いて、おもむろに顔を寄せた。

そしてミズキに見せつけるように頬を指差す。微かに熱をはらむそこは、いまだ真っ赤に腫れていた。


「見てよ、これ。真っ赤になってるじゃん」

「ははは」

「お前も殴んぞ」

「えっ、それはちょっとまじ勘弁。レイちゃんに殴られたら死んじゃうよ」


あくまでふざけた態度をとり続けるミズキの胸ぐらを掴み、拳をちらつかせる。

途端に焦り出したミズキの体は、体育の授業以外の運動なんてまともにしていないものだから、骨と皮しかないのではなかろうかと疑ってしまうほどに薄っぺらい。

体育の評定で五以外は取ったことのない私にとって、ミズキのひょろっこい体をねじ伏せることなど、朝飯前なのである。