「……意味が分からないんだけど」
「なにが?」
授業が終わるや否や、終礼にも出ないで急いで家に帰ってきたにも関わらず、目の前に広がる光景はもう何年も見てきたものだった。
私の部屋の窓際に置いてある私のベッドに寝転がって、私が買った漫画を読む一人の男。
ここはお前の家かよ、とでも言いたくなるような寛ぎっぷりに思わず溜め息を漏らす。
疲労でがちがちに凝り固まった肩をほぐしながら、ベッドのふちに足をかけて、そしてそのまま男の背中めがけて遠慮なく足を下ろした。
「ぐえっ」
「ねえ、ミズキ。なんで私が優那に殴られなきゃならないわけ」
「……ああ、そのことか」
まるで他人事のような言い方をしているが、しかしこの男こそ、今回の騒動の元凶の人物である。