渚は言われた通りにうつぶせになり、その横から隼人が渚の身体に手を当て始めた。

背中から腰から、足に手までもゆっくり何度も何度も手を身体に沿わせてくれる隼人であった。

渚は気持ちの良さで眠りに落ちていきそうであった。

しかし、最後の眠る前に一言呟いた。  

「…成美先生、ありがとう。大…好き…」

隼人はその言葉を聞いて一瞬手を止めたが、すぐにまた手を動かし始めた。

渚のその言葉はシンプルでこそあったが、渚の今の心の全てをあらわす言葉であったことを隼人は分かっていた。

何千回のありがとうより、好きという告白の言葉より、隼人の心にしっかり残ったであろう。

隼人はもう一度全身のマッサージをし終えて、病室を出る時、渚のおでこに優しくキスをしたのであった。そして病室をあとにした。