怪我の巧妙

廊下に出た渚は物の見え方の違い、高さに違和感を感じた。

今まで車椅子での移動だったのが久しぶりに自分で歩いているのだから無理ははない。

渚はゆっくりと進んだ。

壁伝いでさえも手の不調のせいで思うようにできずに何度か転んでしまっていた。

看護婦さんに不思議そうに見られても天性の笑顔でにっこり笑って、助けを拒んでいた。

患者さんには「大丈夫です」とハッキリ言って歩き続けた。

しばらく歩いていたが、ふと顔を上げると、偶然にも遠くの方に隼人の姿を確認した。

ふと近くにあった時計を見るとかれこれ2、30分歩き続けていた。

渚はかなり疲れていたが、隼人に叱られる、という思いのせいで、いわば子供が悪戯をして親に叱られる時の心境だが、急いで方向転換をして病室に帰ろうとした。